2014年3月11日火曜日

コンサート情報:寺田悦子 ショパン・リサイタル 《春の夜会》


 ショパンが愛した ”プレイエル” と現代のピアノ。 異なる音色で奏でるショパンの世界。
寺田悦子 ショパン・リサイタル 《春の夜会》





2014年5月22日(木)
於:紀尾井ホール 19時開演



~Program~

ショパン Chopin スケルツォ 第1番
 Scherzo No.1 in b minor Op.20

即興曲第1番
 Impromptu No.1 in A-flat major Op.29

 即興曲第2番
Impromptu No.2 in F-sharp major Op.36

 即興曲第3番
 Impromptu No.3 in G-flat major Op.51

幻想即興曲
 Fantaisie-Impromptu c-sharp minor Op.66

アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ
 Andante spianato et grande polonaise brillante in E-flat major Op.22

3つのマズルカop.59
3 Mazurkas Op.59

 ピアノ・ソナタ第3番
 Piano Sonata No.3 in b minor Op.58



※コンサートの詳細は、ジャパン・アーツの公式ページでご確認ください。





音楽の歓びにひたる、そんなショパンを堪能したい

《公演に寄せて》
 「春の夜会」という雰囲気で。それが今回のコンサートイメージだと寺田さんは言う。コンサートに明確なコンセプトを示しつづけ、とりわけショパン演奏家として知られる寺田さんならではのオールショパン・プログラム。それも今回は、コンサートの一部でショパンが愛用したことで知られるプレイエルピアノも舞台に登場する。制作年代は異なるものの、その音色の特徴とされる「優美な歌声のような伸びやかさ」は変わらない。寺田さんならではの心づくしの演出とともに、選りすぐりのショパン作品を楽しむ。しばしサロンの賓客になるかのような至福のひと時が用意され、お洒落で素敵なショパンコンサートである。  幼い頃からサロンの寵児で、39年の生涯のどこを切り取っても、その優雅な姿が色あせることがなかったショパンに、最高の芸術を求めて夜会に集う人たちは魅了され、演奏に酔いしれる時を、いつも心待ちにしていた。そしてショパンを聴くことができた稀有な経験を、言葉を尽くして表現しようとした。例えば、リストはショパンの演奏には、どのような言葉、称賛も、魔法ですら叶わない。生涯の親友のフォンタナは、奇跡的な手法による即興は、他の作曲家のフレーズを思い出させることも、自身の他の作品との重なりも感じさせず、霊感は尽きることなく湧き出ると言い、ある音楽愛好家は、感動のあまり、セーヌ川に身を投げてもいいと手紙に書いた。
 今回の曲目だが、ショパンがまだ若きころ、ワルシャワ時代の「華麗なるポロネーズ」にパリ到着後、序奏のように書き加えたノクターン風の「アンダンテスピアナート」。その演奏の難しさゆえに、当時、この曲を演奏できれば、その技巧は類まれだとの批評が残っている。そしてスケルツォ。入りの不協和音で度胆をぬき、勢いをもって人々の心をつかみ取る。幼いころより研ぎ澄まされた才能の核を示すかのような即興曲。パリ到着早々発表すると大評判を得て以降、生涯に亘り創造の手を緩めることのなかったマズルカ、そして構想と構成力においても他の追随を許すことがないかのような才能の証となるソナタ3番。いずれの作品も装飾が豊かで、即興的なきらめきにあふれ、期待をはるかに凌駕する繊細さと大胆さを併せ持ち、奇跡としか言いようがない。
 このような作品を取り上げる寺田悦子さんの今回のコンサート。サロンに幸せにも居合わせた人たちと同じように、音楽による歓びにひたる、そんなショパンを堪能したい人たちに、ぜひお勧めしたい。

小坂 裕子(音楽評論家)