2013年7月31日水曜日

コンサート情報:シリーズ"調の秘密" 第3回 ~悲しくも力強い響き・ハ短調~

寺田悦子 ピアノ・リサイタル
"調の秘密" 第3回
~悲しくも力強い響き・ハ短調~
2012年 10月31日(木)
於:紀尾井ホール 19時開演



~Program~
モーツァルト:幻想曲 K.475
Mozart : Fantasie c-moll K.475

ベートーヴェン:ソナタ第8番「悲愴」Op.13
Beethoven : Sonate für Klavier Nr.8 c-moll Op.13 "Pathetique"

ショパン:ノクターン第13番 Op.48-1
Chopin : Nocturne c-moll Op.48-1

ショパン:ポロネーズ第4番 Op.40-2
Chopin : Polonaise c-moll Op.40-2

ショパン:エチュード第12番「革命」 Op.10-12
Chopin : Etude c-moll Op.10-12

シューベルト:ソナタ第19番 D.958(遺作)
Schubert : Sonate für Klavier Nr.19 c-moll D.958



※コンサートの詳細は、ジャパン・アーツの公式ページでご確認ください。



~「ハ短調」の世界を描き切る、寺田悦子~

  "作曲家は確固たる意志を持って調性を選んでいるのだから、演奏家はそれに応えて常に調性を強く意識しなくてはいけない"
 そのことを後進にも聴衆にも熱く説く寺田悦子の真摯な企画「調の秘密」シリーズは、今回のハ短調で最終回を迎える。このシリーズは、シューベルトが死の年に書いた3作のソナタ(遺作)を核に、他の大作曲家の同じ調の曲を組み合わせることで、作曲家にとっての調性の意味や音楽史の流れを知る、意義深い企画になっている。
 と固いことを述べる一方、プログラムを見れば、「これは名曲コンサート?」と訝る程にポピュラーな名曲が並んでいる。ハ短調の曲は何故こんなにも人気が高いのだろう? その理由を寺田はこう解説する。
 「ハ短調は、あらゆる調性の中で作曲家の主張が最も明確に伝わる調です。ドラマ性に富み、訴える力が強いので、聴き手の心に真っすぐ飛び込み、結果として分り易いのです。もちろんハ短調でも、作曲家によって曲想は様々です。例えばモーツァルトの《幻想曲》は、オペラ作曲家の手腕を余すところ無く発揮した、力強さと悪魔的な幻想味を持つ曲。ベートーヴェンの《悲愴》からは、難聴の苦悩に立ち向かう強靭な精神力と救いを求める心が汲み取れ、シューベルトの遺作のソナタはドラマ性と言い躍動感と言い、敬愛するベートーヴェンへの壮大なオマージュです。ショパンのハ短調は正に直球勝負の曲で、彼の音楽の男性的で情熱的な側面が現れています。要は、ハ短調は人間の感情を最も率直に表せる調性だと言えましょう。
 故に、聴き手は本能的に共感や慰めを得るのだが、演奏者の方は作曲家の人生の悲劇的な局面と否応無しに対峙させられる。長い準備期間を通して、彼らの魂の叫び、激怒、慟哭、死の影と向き合わなくてはならない。寺田にとっては、極度の緊張感と精神力の持続が求められる「シリーズ勝負の回」になりそうだ。


ひのまどか(音楽作家)